2005年09月18日

「麦ふみクーツェ」いしいしんじ ○

麦ふみクーツェ
いしい しんじ作
理論社 (2002.6)
通常2??3日以内に発送します。


ある港町でねこは育った。音楽の事となると、穏やかな紳士から程遠くなる
おじいちゃんと階段の半ばで、時に鉛筆をこつこつしながら、世紀の証明に挑む
数学者のお父さんと暮らしていた。
用務員さんの鐘の音、ちょうちょおじさんと聞いた街の音、先生のチェロの音、
時々ねこにだけ聞こえるクーツェの麦ふみの音――つながっている音の中で
またクーツェの麦ふみがねこの耳に聞こえてくる。

あらすじ紹介が難しくて仕方がないが、私のあらすじ説明が下手であろうと
魅力的な本が沢山ある。これはそんな一冊だと思う。
ねこのスクラップブックと音のつながりが、世界の広さと近さを感じさせる気がした。
そして音楽が作る空間がある、ということを思い出させてくれた。
落ち着いた気持ちで、本のページをめくる音も、ねこの音楽になるんだろうか、
などと思った。

いしいしんじ作品は穏やかで、不思議な雰囲気を漂わせている。
プラネタリウムのふたごでは星の瞬きと夜の空気が、この「麦ふみクーツェ」では
クーツェの麦ふみがそれを創っていたように思った。

装丁は文庫版もハードカバーもどちらも好きだが、
初めて読んだ方がハードカバーだったので、そちらを挙げてある。

読みやすさ:★★★★
ぐいぐい読み耽る本というよりは、ゆったりと読書を楽しむ本、という感じ。
posted by ks at 23:19| Comment(0) | TrackBack(2) | あ行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月11日

「黄金旅風」飯嶋和一 ○

黄金旅風
黄金旅風
posted with 簡単リンクくん at 2005. 9.11
飯嶋 和一著
小学館 (2004.4)
通常24時間以内に発送します。



貿易で栄え、故郷階級を問わず、ありとあらゆる人々が暮らす長崎。
大御所秀忠の時代から家光の時代へ移ろうとする中、海商と、投資で甘い汁を吸っていた
幕閣らの水面下の戦いが繰り広げられていた。内町火消のお頭平尾才介、
朱印船貿易家末次平左衛門、時代を理解し長崎を守る彼らの波瀾に満ちた5年。

今も昔も人間の愚かさは変わらないんだなぁと思った。鎖国に関して
後世の私達は愚かだいやあれもある意味必要だなどと好き勝手に言う事ができる。
しかし、鎖国に向かう当時も今も罪なき人を殺す権力欲や金銭欲から起こる争い、
相手をさげすむことから起こる己の愚を露呈する争いがあって
報復に報復を重ねて勝てば終わると信じる恥ずかしい人間にあふれている事には
何の違いもなくその中で何もできていない自分を痛感した。

高校時の資料集での1,2行の中にこんな事があったかもしれない、
当時の長崎は大きく動いたんだなぁ、とこの本に気づかされた気がする。
平左衛門の闘いも駆け引きが有り読み応えがあるが、数奇な運命を辿った鋳物師
平田真三郎から描かれた当時の長崎市民の姿も印象的だった。
もちろんこの話は過去の話なのだが、この本を読んで改めて一度長崎を訪れたいと思う。

情報を集め、戦い抜いた平左衛門も、あらゆる人から頼りにされていた才介も
かっこよかったけれど、この本で一番かっこいいなあと思ったのは濱田彌兵衛だった。
大事な時ほど感情的にならず冷静で、行動力もあって、それだけに、
平左衛門が彌兵衛を説得するシーンにも、重みがあったのだと思う。

装丁も好きだった。話とよく合っているし、手元に置きたいと思わせるデザインだ。
黄色がまた「黄金旅風」というタイトルにも合っていたと思う。
(ちなみに装丁の方は「花に非ず」と同じ)

読みやすさ:★★★
時勢背景がしっかり描写されているので、歴史物が好きな人、
当時の様子を知りたい人には、お勧めである。
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2005年08月06日

「非花(はなにあらず)」井上祐美子 ○

非花(はなにあらず)
井上 祐美子著
中央公論社 (1998.3)
通常2??3日以内に発送します。



19世紀最後の年、義和団の乱が起こり8ヶ国の制圧下におかれ、略奪が横行する中国。
そんな時分のある夜、ドイツ陸軍中佐マンシュタインを訪ねてきた一人の女性がいた。
(表題作「非花」ほか、3作「梅花三弄」「傅延年」「葛巾紫」)

表題作をはじめとして、静かで、でも波瀾に満ちた花が咲くさまに想いを馳せたくなる
ような短編揃い。これまで紹介してきた短編より長く中編といえるかもしれない。
どれもが各々の味わいを持っている。花に擬えるのが皮肉でもあり、もっともでもある。
傅延年の話は神話のようでひょうひょうとした感じだし、かと思えば非花では
賽金花のドイツでの幼さと、彼女の聡明さに悲しさを感じた。彼女は花の様でありながら
花にはなれず、それゆえに気高く感じられた。

梅花三弄も葛巾紫も好きだったし、この本全体に漂う雰囲気が良かった。
中表紙の花の絵は雰囲気が合っていてきれいだと思った。

読みやすさ:★★★
いい本で好きだけど読みやすいという観点で言えば、
誰に対しても「読みやすいしオススメ!」とは言えないかもしれない。
posted by ks at 21:58| Comment(0) | TrackBack(0) | あ行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年07月17日

「戒」小山歩 ○

戒
posted with 簡単リンクくん at 2005. 7.17
小山 歩
新潮社 (2002.12)
この本は現在お取り扱いできません。


再という国があった。そこには戒猿と人々に嘲笑されていた舞舞いがいた。
少し複雑な生い立ちと母の呪縛から、豊かな才能を活かせず道化舞いに
ならざるを得なかった戒。しかし、さまよい苦しみの果てに、生そのものを舞にした、
猿舞舞い戒の一代劇。

読んだ色々な書評から受ける感じもいいので、かける期待はかなり大きかったのだが、
それを裏切らない本で久々にのめり込むように読んだ。読んだ後も暫く圧倒されて、
他の本をすぐ読む気にさせなかった。大陸の一小国で祖先信仰の再という国が舞台で、
正式な記録にはいない伝説の人である戒の一生を描いた物語であるのだが、
故事やことわざをアレンジして自然に取り入れていて、本当にあった歴史のような
錯覚さえ覚えた。この小説には途中に現代の視点、が入る。普通、この手の記述は
現実にいきなり戻されるようで私は苦手なのだが、今回は史実のようなリアリティを
盛り上げてくれたと思う。戒の舞を一番「たかが、」と軽視していたのは
戒自身であったが、彼がやっと自嘲を捨てて選んだ舞舞いの生き方だからこそ
クライマックスは感動を呼んだのだろうと思った。戒は勿論ずっと舞の名手だったのだが、
最後、再を救うための彼の舞はそれまでとは大きく違ったものだったに違いない。

冒頭の夢が綺麗なだけに彼の壮絶な人生が鮮やかな小説だった。

読みやすさ:★★★
好きな人はぐいぐい読めると思うが、歴史小説が苦手な人にはきついかもしれない。
posted by ks at 21:47| Comment(0) | TrackBack(1) | あ行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年06月03日

「われはロボット」アイザック・アシモフ ○

われはロボット
小尾 芙佐 / Asimov Isaac
早川書房 (2004.8)
通常24時間以内に発送します。



USロボット社でロボット心理学者として活躍したスーザン・キャルヴィン。
人からロボットのようだと言われる彼女が暖かい目を向けたロボット達の歴史を
さまざまなタイプのロボットとUSロボット社の面々が体験してきた事件から追っています。

これは実は昔から好きな本でこれも改めて最近読み直して書いています。
アシモフの作品は、アクションがないものも随分ハラハラさせられるんだなぁ、
と感心します。黒後家蜘蛛の会シリーズも好きですが、私は「われはロボット」が
アシモフ作品では一番です。かの有名なロボット工学3原則にも感心しますが、
一つ一つのエピソードに、登場人物たちの人間らしさが活きているのがいいと思います。
相手がロボットならではでしょうか。
でも、この小説の世界に近づくのはまだまだ先ですね。
好きなシーンは、キャルヴィン博士がロボットに対して見せる愛情が感じられる
シーンです。ネスター10号の話の彼女の言葉も、バイアリイ氏との対話も
なんとなく好きです。

これもタイトル訳がツボをつきました。
わりと最近、映画化しましたが見損なったままです。
CMをみた時、凄いアクションっぽくなってるなぁと
思ってちょっと尻込みしてしまったのです(^_^;)
実は装丁はハヤカワ文庫の古い、青いほうがお気に入りです。
新しいのもそれっぽくて勿論嫌いじゃないのですが。
今古い方は扱われていないようなので、
新しい方にリンク貼っておきます。

読みやすさ:★★★★
話も割と分かりやすいのではないかと思うので。
posted by ks at 17:48 | TrackBack(0) | あ行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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