2010年07月28日

2010年07月15日

2010年07月11日

「テレヴィジョン・シティ」長野まゆみ



『ビルディング』に住み、監視される『生徒』たち。
パパ・ママに手紙を書き続けるアナナス。同室で冷静なイーイー。
ビルディングに、イーイーの依存する精油、アナナスの曖昧な記憶…
アナナスに投げかけられる問いへの答えとは。

実はこの本は、初読ではない。
だが、久しぶりに見かけ、手に入れ、一気に読み返した。
久しぶりに感想なり、文章を書きたくなった。

夏になると、長野まゆみが読みたくなる、とは友人の言だ。
ここに特にテレヴィジョン・シティが、と付け加えたい。

独特の透明感とひんやりとした空気、読者を引き込んで離さない密閉性を持った本だからだ。
後半になるにつれ、切なくなる。
だが、ずっと変わらず、ガラス瓶に反射する光のような煌めきがある。
氷のようで、夏になると読みたくなるのだ。

もう一つ、この作品で印象的なことがある。
イーイーやアナナスは、問いかけられるのだ。「最後に捨てるのはボディかスピリットか」と。
問いかけに「ボディだ」とアナナスは即答した。
イーイーの答えは最後まで明かされないが、とても意味の深い答えだと思う。
咄嗟に理解しうる人はなかなかいないのではないだろうか。
初読の時は、私はアナナスと同じように考えたし、イーイーの言葉の意味が分からなかった。
今回、久しぶりに読み直して、自分なりにイーイーの答えに共感するものがあった。
再び、テレヴィジョン・シティの魅力を感じた。

長野作品は人に薦めるのが難しい。
現代ミステリーのような普通の世界を描いていないこと、
非常に独特の表現がされているからだ。
また、作品によっては要素要素が強烈なものもある。
私自身、苦手なものもある。
しかしその一方で、読む度にはまっていく深みもあると思う。
posted by ks at 23:16| Comment(0) | TrackBack(0) | な行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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